2026年(令和8年)6月24日に公布された改正法(令和8年法律第45号)で、「後見」「保佐」という区分はなくなり、「補助」に一元化されます。
ご家族から最も多くいただくご質問が、「今すでに後見を利用しているが、勝手に内容が変わってしまうのか」というものです。
結論から申し上げると、施行によって自動的に内容が変わることはありません。 そのうえで、「そのまま続ける」「新しい補助へ移る」「利用を終える」の3つから選べる形になっています。順にご説明します。
なお、令和7年12月末の時点で、後見を利用されている方は約18万人、保佐は約5.8万人、補助は約1.8万人です(最高裁判所の統計)。同じ問いを抱えている方は大勢いらっしゃいます。
選択肢① そのまま続ける(手続きは不要です)
施行日の時点で後見・保佐を利用されている方については、改正法の附則が「なお従前の例による」と定めています。 何も手続きをしなければ、これまでどおりの内容で続きます。後見人の権限も、これまでのままです。
ただし、次の2つについては、手続きをしなくても改正後の新しい規定が適用されます。
| 内容 | 何が変わるか |
|---|---|
| 後見人等の解任 | 不正がなくても、ご本人の利益のために特に必要があるときは解任(交代)を求められるようになります |
| ご本人の意向の把握 | 後見人等に、事務についての情報を提供し、ご本人の意向を把握するようにする義務が課されます |
つまり、「続ける」を選んでも、後見人の交代のしやすさと、ご本人の意向を聴く義務については改正の恩恵を受けられます。 ここは知っておいていただきたい点です。
ただし、「相性が合わない」という理由だけで交代を求めることはできません。 面談が行われていないなど、ご本人が適切な保護を受けられていないといえる事情が必要になります。
選択肢② 新しい「補助」へ移る
「後見のままだと権限が広すぎる」「必要な範囲だけに絞りたい」という場合は、補助の開始を家庭裁判所に申し立てることで、新しい制度に移ることができます。
手続きの流れは次のとおりです。
- 補助開始の審判を家庭裁判所に申し立てる
- 家庭裁判所が、必要な行為ごとに代理権・同意権の範囲を定めて補助を開始する
- そのときに、家庭裁判所が従前の後見開始(保佐開始)の審判を取り消す
3は家庭裁判所の側で行われますので、「後見をやめる申立て」と「補助を始める申立て」を別々に出す必要はありません。
ポイントが2つあります。
- 申立てができる人に、後見人・後見監督人(保佐人・保佐監督人)が加えられています。 ご親族が遠方にお住まいでも、後見人の側から移行を申し立てられます
- 家庭裁判所は、施行日前に後見開始の審判を受けていたことを考慮しないと定められています。「以前は後見相当だったから」という理由で判断されるものではありません
新しい補助がどのような制度になるかは、新しい「補助」はどんな制度かで詳しくご説明しています。
選択肢③ 利用を終える
改正法の附則には、後見開始・保佐開始の審判を取り消すことができる、という規定が置かれています。 ご本人・配偶者・四親等内の親族のほか、後見人・後見監督人からも請求できます。
条文は「取り消すことができる」という書き方ですが、制度を設計した側では「相当でないときを除いて取り消す」という運用が想定されています。 つまり、請求すれば当然に終わるわけではない一方で、終わらせにくい仕組みとして作られているわけでもありません。
家庭裁判所が「相当でない」と判断することが考えられるのは、たとえば次のような場合です。
- 財産管理を任せられる方が他にいらっしゃらず、終了するとご本人の生活が立ち行かなくなる場合
- まだ終わっていない手続き(遺産分割、不動産の売却など)が残っている場合
- ご本人が経済的な被害を受けるおそれが具体的にある場合
逆に、利用のきっかけになった手続きが終わり、その後の日常的な金銭管理を別の形で支えられる見通しが立っているときは、終了が認められやすいと考えられます。その受け皿としては、社会福祉協議会等による支援が法律上に位置づけられました(→身寄りのない高齢者を支える新しい公的制度が始まります)。
「終わらせられるかどうか」は、終わらせた後の生活をどう支えるかとセットで検討する話になります。ここは個別の事情によって結論が変わりますので、ご相談ください。
いま補助を利用されている方は
施行日前にされた補助開始の審判は、改正後の補助開始の審判とみなされます。 同意権を付与する審判、代理権を付与する審判についても同様のみなし規定があります。手続きは不要で、そのまま新しい補助として続きます。
「施行前に申し立てたほうがよいのでしょうか」
これから申立てを検討されている方から、よくいただくご質問です。
まず事実関係として、施行日前に申立てをしていても、審判が確定しないまま施行日を迎えた場合、その申立ては補助開始の申立てとみなされます。 「先に出しておけば現行の後見で確定する」とは限りません。
そのうえで、当センターの考えをお伝えします。
- やるべき手続き(遺産分割、不動産の処分、施設の入所契約など)が決まっている場合は、待たずに進めていただくことをお勧めします。 施行日は最長で2028年12月24日まで先送りされる可能性があり、その間にご本人の状況が変わることのほうが現実的なリスクです
- 急ぐ事情がなく、「権限を必要な範囲に絞りたい」という点を重視される場合は、制度の見直しを待つという判断もあり得ます。 ただし施行日が未定である以上、いつまで待つことになるかは分かりません
どちらが適切かは、ご本人の状況と、いま解決しなければならない課題によって変わります。 面談で状況をお聞きしたうえで、見通しを含めてご説明します。
まとめ
- 施行によって、いまの後見・保佐の内容が自動的に変わることはありません
- ①そのまま続ける(手続き不要。ただし解任のしやすさと意向把握の義務は改正後の規定が適用されます)
- ②補助へ移る(補助開始を申し立てると、家庭裁判所が従前の審判を取り消します。後見人からも申立てができます)
- ③利用を終える(取消しを請求できますが、認められるかは家庭裁判所の判断です。終了後の支えとセットで考える必要があります)
- いま補助を利用されている方は、手続きなしで新しい補助に引き継がれます
- 施行日は未定で、遅くとも2028年12月24日までに政令で定める日から施行されます
ご相談ください
「このまま続けるべきか」「移行や終了を検討できる状況か」は、ご本人の財産・生活の状況と、残っている手続きによって変わります。すでにご利用中の方のご相談も承っています。
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